平成26年度入学式を挙行しました。 公開日  :  2014-04-25 13:27

なっきょんの大学レポート

 平成26年4月4日、奈良教育大学講堂において、平成26年度入学式を挙行しました。

 満開の桜の下、343名の新入生が、緊張した面持ちで奈良教育大学での新たな生活をスタートさせました。

 長友恒人学長からは、「学問発祥の地 奈良で、広い視野を持って、そして大きすぎるくらいの目標を持って、しっかりと学んで欲しい。」とエールが送られました。

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。

 教職員一同、みなさんの本学での生活が充実したものになるよう、応援しております。

【新入生】

  • 教育学部 270名
  • 大学院教育学研究科 60名 (修士課程50名、専門職学位課程10名)
  • 特別支援教育特別専攻科 13名 

  入学式の様子 部活に勧誘する様子
 告辞を述べる長友学長              部員を獲得しようと勧誘に励む在学生

■ 学長告辞


 本日、教育学部270名、大学院教育学研究科60名、特別支援教育特別専攻科13名、合計343名の入学生を迎えることができました。本学教職員を代表して、みなさんの入学を心から祝福し、歓迎いたします。

 

 本年度入学のみなさんの出身都道府県は、およそ4人に1人が奈良県から、2人が奈良県外の近畿圏から、そして1人が近畿圏外からの入学者です。みなさんは、奈良教育大学に、あるいは奈良に魅力を感じて志願してくれたのだと思いますが、これから学生生活を過ごす奈良はどのようなところでしょうか?

 

 遠足や修学旅行で訪れた東大寺の大仏さん、毎年テレビで放映される若草山の山焼き、お水取りの大松明は知っているでしょう。歴史に関心がある人のなかには、邪馬台国は北九州かヤマトかという邪馬台国論争、あるいは箸墓古墳は倭の女王卑弥呼の墓か、という謎解きめいた歴史ロマンに関心がある人も少なくないと思いますが、確かな史実に基づく奈良の歴史の例としては、西暦538年の仏教伝来(異説あり)、607年の法隆寺の創建、7世紀に始まった律令制に基づく中央集権国家の形成、752年の東大寺大仏開眼供養などがあげられます。歴史時代の始まり頃から、平城京から長岡京を経て794年に平安京に遷都するまでのおよそ500年間、日本列島の政治・経済・文化の中心は奈良にありました。それだけに、奈良を発祥の地とする事柄が数多くあります。諸説はありますが、能楽、相撲、日本酒、茶道などの源流は奈良にあると考えて良いでしょう。

 奈良が日本における発祥の地であるもののひとつに仏教があります。6世紀前半の仏教伝来は日本における歴史上、最も重要なできごとのひとつでありました。同時期に大陸から奈良を経由してもたらされた様々な文化・技術・思想は、その後の日本仏教の変遷を含めて、現代日本文化の基調を形成するものだと考えられます。有史以来、日本が積極的に外国の文化や技術を取り入れて政治・経済・文化の革新を行った時期が2回あると言われます。そのひとつは東京を中心とした明治の「近代化」であります。そして、もう一つが奈良の仏教伝来前後の時代であります。

 「近代化」の明治時代には、近代的な学制とともに高等教育機関として東京開成学校に起源を持つ東京帝国大学を初めとして、1939年までに7つの帝国大学が設置されました。6世紀の仏教伝来後の奈良時代には南都七大寺が官立の寺院としてありました。南都七大寺は学問の府としての性格を色濃く有していました。奈良は日本における学問発祥の地でもあります。

 

 みなさんは、このような歴史に満ちた奈良にある本学に入学し、新たなスタートを切ることとなりましたが、高校までの学びと大学での学びはどう違うのでしょうか?

 みなさんの初等・中等教育での学習は、人類がこれまでに築きあげ、体系化した学問の成果を、小学校・中学校・高等学校それぞれの段階に応じて自分の知識としてまとめあげるプロセスでありました。高等教育機関である大学での学びは、知識を体系的にまとめるだけでなく、自らの関心を基に新たに課題を発見し、その課題の解決に向けて自ら解答を模索するという「研究」の要素を含みます。

 課題を発見することと課題を解決すること・・・どちらがより難しいでしょうか?課題を解決するためには、自ら調べ、データを積み上げ、整理して答えを見つけることになりますが、課題や問題意識が明確であれば、一定の答えを見つけることは可能です。一方、課題を発見(設定)するためには幅広い知識と体験が必要です。「解決すべき課題は何か」を見極めるためには幅広い知識が必要であり、「自分がそのなかで極めたい課題は何か」を設定するためには体験的な直感が必要でしょう。その意味で、広く深く知識を吸収し、体験的に学ぶなかで、卒業・修了までの自分の課題が何であるかを早期に見つけることが大学生活を充実させる「こつ」です。一見して、すぐには役立たない知識を幅広く、また深く吸収し、体験することを心がけて下さい。それが積み重なって、身についたものが諸君の「教養」ともなります。

 

 ところで、これから始まる学生時代はみなさんの人生の中でどのように位置づけられるでしょうか? みなさんの多数は、卒業後に教師になる希望をもっていると思います。まだ、卒業後の進路をイメージできていない諸君もいるかもしれませんが、いずれにしても、卒業・修了後は職業人です。プロフェッショナルな職業人になっていただきたいと思います。プロフェッショナルな職業人に共通している特質は、「不断に学び続ける」ということです。学び続けるひとはいつまでも新鮮に感動を覚えることができますし、周囲の人々に感動を与えることができます。

 不断に学び、深く学び続けるためには2つの要素が必要です。ひとつは、学びを楽しいと感じる「学び」を体得することです。大学の限られた時間の授業のなかですべてを教授できないことは自明のことです。授業を通して「学び方を学ぶ」ことが重要です。「学び方」を習得することによって、自分の関心に応じたアプローチをすることができるようになります。学びを重ねる一連の作業によって、学びを楽しいと感じるようになるでしょう。「学ぶ喜び」を知ったひとは学び続けます。義務的に学ぶのではなく、学びを楽しめるようになっていただきたいと思います。

 学びを深めるためには、「裾野」を広げることが必要です。大学の授業の他に、課外活動に、フィールドワークに、スクールサポート活動やボランティア活動にトライして、新しい発見をしてください。講義で学ぶこととは異なる体験のなかに学びを深めるヒントがあるかもしれません。課題によっては、海外に出ること、いろいろな本を手当たり次第に乱読することも有効です。学生時代の知的体験、実践的体験が多ければ多いほど、裾野が拡がり、高い専門性をピラミッドのように築くことが可能になります。

 

 最後に、良好な人間関係をつくっていただきたい、ということを強調したいと思います。ひとはコミュニティーの一員として生きています。1人で生きていくことはできません。インターネットなどの仮想の世界ではなく、キャンパスのなかで、また、課外活動やスクールサポート、ボランティア活動などを通して、ディスカッションできる友人、協働できる人間関係を築いて下さい。良好なコミュニケーションは悩みを軽くしてくれ、孤独から解放してくれるだけでなく、生活を豊かに色づけしてくれます。

 

 改めて、大学での学びを通じて専門性を身につけると同時に、幅広く、また深く、いろいろな世界を知り、体験することが、社会人になった後にプロフェッショナルな職業人として成長を続けることができる、人生を豊かにすることの礎になることを、もう一度、強調しておきたいと思います。

 学問発祥の地奈良にある本学で、広い視野をもって、大きすぎるくらいの目標を掲げて、一歩一歩、学びを楽しんでくれることを期待して、告辞といたします。

 

平成26年4月4日  奈良教育大学長  長友 恒人

最終更新 : 2022-05-11 10:00