奈良教育大学 ESD書籍編集委員会が『学校教育における SDGs・ESD の理論と実践』を刊行 公開日  :  2021-04-05 19:07

新着情報

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書籍情報

編 著 者:奈良教育大学ESD書籍編集委員会
出 版 社:協同出版株式会社
定   価:3,080円(本体 2,800円)
サ イ ズ:A5版
頁   数:367頁
図書コード:ISBN978-4-319-00343-3

出版にあたって

 いま世界では地球規模の環境変化と人口増加、不平等、貧困など、様々な問題が人間社会と地球環境を持続不可能なものへと変えつつあります。それらの多くは人間社会の問題であり、解決方法もまた我々の手にゆだねられています。2015年には「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が国連総会で採択されて「持続可能な開発目標 (SDGs)」が掲げられました。これからの人間社会を持続可能な社会へと変革させるには、「誰ひとり取り残さない」という決意の下、貧困に終止符を打ち、地球を保全し、全ての人が平和と心の豊かさを享受できる社会をつくる担い手を世界中で育成することが必須です。

 この流れを受けて、日本では2017年3月に公示された幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領及び2018年3月に公示された高等学校学習指導要領の前文と総則において「持続可能な社会の創り手」の育成が掲げられました。SDGsを達成して持続可能な社会を創造してゆく上で、校種や教科を問わず「持続可能な開発のための教育 (ESD)」の推進が求められていることを示しています。しかし、ESDは単一の校種の教科ではなく校種と教科をまたぐ新しい教育であるため、これまで培ってきた教育学だけでは対応できないのは明らかです。そのためESDに関する研究と実践を進めるとともに、ESDを実践できる教員の養成・研修は不可欠です。

 これまで奈良教育大学は、近畿地方全域を視野に大学・現職教員・教育委員会などのネットワークを強化する拠点として「近畿ESDコンソーシアム」を創設するとともに、ESDを実践できる教員の養成・研修を目的とした「ESDティーチャープログラム」を実施するなど、ESDを核とした教員養成・研修の高度化事業を展開してきました。その成果は、報告書や研究論文、稼働しているコンソーシアム、研修を修了した現職教員などに現れていますが十分ではなく、日本における持続可能な社会の創り手の育成をさらに進めることが必要です。そこで、教育によるSDGsの実現を目指して本学は、ESDとSDGsに関する情報と、本学で培った成果を下地とした学校教育におけるESDの実践モデルを提示する現職教員と学生向けの教科書を編纂することになりました。

 序章では本書の構想や射程を論じ、第1章、第2章では、ESDおよびSDGsに関する基本的なコンセプトや歴史的経緯を概説するとともに、本学での「ESDティーチャープログラム」について紹介します。第3章では、幼稚園と小学校・中学校を中心に、各教科等の新しい学習指導要領において如何にESDの内容が示されているかを解説します。 つまり、学習指導要領、幼稚園教育要領をESDの視点から読み解きます。第4章では、SDGsを達成するためにはESDが重要な役割を果たすということを踏まえた上で、SDGsの17目標と169ターゲットに関わるトピックを幾つか紹介するとともに、それらを教材として活用する上での要点や子どもたちに教える内容について論じます。第5章では、ESDに基づいて作成された各教科等の学習指導案と実践事例の報告を掲載して、期待される教育成果について論じます。

 本書を持続可能な社会の作り手を育てる、ご自身が持続可能な社会の作り手となるための契機としてご活用いただけますと幸いです。

奈良教育大学ESD書籍編集委員会
委員長 宮下俊也

目次

まえがき

序説 本書の構想

 第1節 問題の所在

 第2節 なぜ今,ESD-SDGsなのか

 第3節 SDGsが目指す幸福度の向上

第1章 SDGs・ESD概論(ESDとSDGsの関係

 第1節 SDGsのこれまで
     第1項 MDGsについて
     第2項 SDGsについて
     第3項 MDGsとSDGsの共通点と相違点  

 第2節 ESDのこれまで
     第1項 ストックホルム会議から2014年まで
     第2項 国連持続可能な教育のための10年(UNDESD)
     第3項 ESDグローバル・アクション・プログラム(GAP)と、ESD for 2030

第2章 ESDの概要

 第1節 ESDのねらいと特徴

 第2節 ESDで育てる
     第1項 ESDで育てたい価値観
     第2項 ESDのソマティック・マーカー
     第3項 ESDの視点(見方・考え方)
     第4項 ESDで育てる資質・能力

 第3節 ESDを指導する教員に求められる資質・能力と研修

第3章 新教育課程とESD

 第1節 新教育課程におけるESDの扱い

 第2節 総合的な学習の時間におけるESD 

 第3節 教科教育におけるESD
     第1項 国語科とESD
     第2項 社会科とESD
     第3項 算数科・数学科とESD
     第4項 理科とESD
     第5項 生活科とESD
     第6項 音楽科とESD
     第7項 図画工作科・美術科とESD
     第8項 技術科とESD
     第9項 家庭科とESD
     第10項 体育科・保健体育科とESD
     第11項 外国語科とESD

 第4節 道徳教育とESD

 第5節 特別活動とESD

 第6節 インクルーシブ教育とESD

 第7節 幼稚園教育要領とESD

 第8節 ESDとカリキュラム・デザイン

第4章 ESDで取り上げたいテーマ

 第1節 地球環境分野
     第1項 地下資源とエネルギーの枯渇
     第2項 気候変動の現状とその影響
     第3項 水産資源の枯渇
     第4項 海洋プラスチックの問題
     第5項 生物多様性の劣化
     第6項 森林破壊と日本の森林の現状
     第7項 「奈良のシカ」とその保護管理
     第8項 農業の基本価値
     第9項 公害・環境問題ーイタイイタイ病と水俣病を中心にー
     第10項 ユネスコエコパークのESD教材開発
     第11項 ジオパークのESD教材開発

 第2節 社会分野
     第1項 世界の貧困・日本の貧困
     第2項 無縁社会・子ども食堂
     第3項 不登校・引きこもり問題と子ども・若者支援
     第4項 Society5.0
     第5項 障害のある人とその権利保障
     第6項 市民性教育 
     第7項 外国人児童生徒教育
     第8項 核兵器・平和
     第9項 防災・減災①自然災害の定義とハザードマップの活用
          防災・減災②学校安全管理を災害医療の視点から考える
     第10項 地域における文化遺産
     第11項 世界文化遺産のESD教材
     第12項 伝統音楽とESD
     第13項 図画工作・美術・工芸科とESD
     第14項 書写書道とESDー水書用筆の登場ー
     第15項 パラリンピック教育

 第3節 経済分野
     第1項 ESG投資
     第2項 食品ロス
     第3項 ワーキングプア
     第4項 格差社会

第5章 学校における実践事例

 序説 ESDの授業づくり

 第1節 幼稚園

 第2節 小学校
     第1項 社会科①
     第2項 社会科②
     第3項 理科
     第4項 生活科
     第5項 家庭科
     第6項 体育科
     第7項 外国語
     第8項 総合的な学習の時間①(環境教育)
     第9項 総合的な学習の時間②(防災教育)
     第10項 総合的な学習の時間③(平和学習)

 第3節 中学校
     第1項 国語科
     第2項 社会科
     第3項 数学科
     第4項 理科
     第5項 音楽科
     第6項 美術科
     第7項 保健体育科
     第8項 技術科
     第9項 家庭科
     第10項 英語科
     第11項 道徳
     第12項 総合的な学習の時間(地域学習)
     第13項 特別活動(生徒会活動)

 第4節 特別支援学級・学校
     第1項 知的障害・発達障害のある子どもの自治的活動(特活・自立活動)
     第2項 知的障害のある中学生の音楽科

あとがき

お問い合わせ先
奈良教育大学 教育研究支援課 ESD担当
Tel:0742-27-9369
E-mail:k-soumu