これからの家庭科教育への架け橋に(家庭科教育講座 村上睦美)

奈良教育大学
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これからの家庭科教育への架け橋に(家庭科教育講座 村上睦美)

 身近なテーマについて教員に語っていただくリレーコラム。
 最初のテーマは、なっきょんナレッジの発足に合わせて「これまで→これから」としました。
 奈良教育大学の教員のこれまでのあゆみ、そしてこれからの展望についてお話しします。

これからの家庭科教育への架け橋に

 私は,大学学部時代に生理学や分子生物学の視点から人の生活と健康について学び,家庭科教員免許と保健体育教員免許を取得しました。学部4回生のとき卒業後の進路について大変悩みましたが,大学で学んだ知識を大いに活かすことができるのは家庭科教員であると考え,家庭科教育学に関する研究を行うために大学院に進学しました。

 大学院修了後は茨城県の高等学校にて家庭科教諭として4年間勤めました。着任当初から地域との連携教育に関心を抱いており,特に学校家庭クラブ活動において消費生活センターと連携を図った消費者教育に力を注ぎました。主な活動として,消費生活センター相談員の方々にご協力をいただきながら,高校生による小中学生を対象としたSNSトラブル予防の出前講座を行いました。高校生と消費生活センターが連携して消費者トラブル予防の啓発活動に取り組むことによって,高校生における消費生活に関する知識の向上と,消費生活センターによる若年者の消費者トラブルの早期発見につながります。さらに,消費者トラブルの予防方法及び対処策を地域に発信していくことで地域の消費者力が向上し,消費者市民社会の構築に寄与することが期待されます。

 現在は,本学で家庭科教育講座の教員として家庭科教育学および食物学を担当しており,これまでの経験を活かして以下の3つの「架け橋」となることを目指しています。

①学校現場と大学

 学校現場では校務分掌や生徒指導,学級経営が日々の業務の中心であり, "授業が最大の生徒指導"と言われているのにもかかわらず,授業の準備や教材研究の時間を十分に確保することが困難であることを実感しました。そのため,大学の講義において家庭科の授業づくりや指導方法の基礎,実習室の管理方法など,学校現場に出る前に確実に身に付けておくべき知識・技術の習得を意識して指導の工夫を心がけ,将来教員を目指す学生のサポートに努めていきたいです。

②地域と大学

 自治体や地域の企業の方々と大学生の交流の場を積極的に作り,大学生が地域の方々から専門的知識だけでなく多様な視点や考え方を知ることができる機会を設けることを心がけています。現在,大学の講義や実習において奈良県消費生活センター相談員の方々や大阪ガス株式会社様による出前講座を依頼させていただいております。

 今後は,家庭科教育専修の学生が学んだ知識を活かして地域の教育に還元していけるような取り組みを実施していきたいです。

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奈良県消費生活センター出前講座
「消費者トラブルの実態と中学・高等学校の消費者教育」

大阪ガス出前講座
「エコ・クッキング」

大阪ガス出前講座
「防災クッキング」

③家庭科とさまざまな教科

 これまで生理学や分子生物学,微生物学に関する実験に携わってきた経験を活かし,教科融合を意識した講義及び実習を行っております。例えば,調理実習における衛生指導の場面で,細菌の生物学的特徴を説明した上で,食中毒予防のためにどのような対処が必要なのかを学生に考えてもらいます。そうすることによって,各食品における食中毒予防方法について自ら導き出すことができます。このようにして,他教科に関するさまざまな知識を活用して教科融合の発展につながる教材開発に努めています。

 今後,様々な学問を融合させた学際的な研究を行い,これからの家庭科教育の発展に貢献していきたいと思います。

奈良教育大学 家庭科教育講座 准教授 村上睦美

※この記事は、2021年3月の情報を元に作成されています。

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カテゴリ   :   リレーコラム
最終更新 : 2022-02-28 16:58