子どもの世界を紐解く手がかりとしての遊び(学校教育講座 廣瀬聡弥) 公開日  :  2021-10-01 08:39

奈良教育大学
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子どもの世界を紐解く手がかりとしての遊び(学校教育講座 廣瀬聡弥)

今回は、学校教育講座の廣瀬先生にお話を伺います!

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ようこそ。よろしくお願いします。

よろしくお願いします!早速ですが、先生の研究について教えてください。

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私は、乳幼児期の子どもにとって、良い教育・保育とは何かということについて研究しています。良い教育・保育を考えるにあたり、乳幼児の発達や遊びの理解、保育者がどのように教育・保育を行うのかなど、様々な要素があり、それらを総合的に検討する必要があります。さらに、そもそも良い教育・保育とは一体何かについても検討する必要もあり、とても大きなテーマです。

子どもにとって良い教育・保育ですか。とっても大きいテーマですね。具体的にはどんな視点から取り組んでいるんですか?

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先ほど、お話した要素の中で、私が特に力を入れて取り組んでいるのは、子どもの遊びについてです。私の研究を具体的に述べる前に、子どもの遊びについて少しお話ししますね。

はい!よろしくお願いします。

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遊びは、乳幼児期の子どもの生活の大半を占める活動です。皆さんにとっては、遊びというと当たり前の行動で、それを研究することの意義はどこにあるのかといった疑問が生じるかもしれません。しかし、子どもの遊びを観察する機会があればじっくりと見て下さい。遊びの複雑さ、気まぐれさに驚かされます。

ふむふむ、例えばどんなところでそう感じるんですか?

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例えば、幼稚園の砂場で泥だんごを作っては壊す、作っては壊すという活動を繰り返していた子どもが、次の日も飽きることなく、砂場で同様の活動を展開していることがあります。一方で、絵を描いている子どもが、突然、絵を描くことをやめて積み木を用いた遊びへと転じるという様子も見られます。
このように遊びは、1つの活動に集中して同じ動作を何度も繰り返すこともあれば、逆に何らかの出来事に触発されて突然始まり、あっけなく終わることもあります。それでは、なぜ、子どもは同じ遊びを繰り返したり、飽きたりするのでしょうか?また、繰り返したり飽きたりすることは、子どもにとってどのような意味があるのでしょうか?

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う~ん、ふだん見ていても、どんな意味があるかについてはわからないですね。子どもの気持ちになってみればわかるかも?

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そうですね。子どもの気持ちになることが大切ですね。皆さんは、必ず乳幼児期を経験して現在に至っているので、そんなことは簡単と思うかもしれません。しかし、人はその時期を過ぎ去ってしまうと、以前の自分の気持ちや思考などを理解することが難しくなります。例えば、皆さんは、かけ算の九九で「2×2=?」というと「4」と簡単に答えることができます。しかし、小学校2年生で学んだ時は理解できなかったり悩んだことと思いますが、皆さんがその時の状態に戻って考えることはできません。

そうですね、時間をさかのぼって考えることは出来ないです・・・

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また、教師として教える場合、なぜ、子どもが理解できないのかを理解する必要があります。先ほどの例に戻ると、何度も繰り返し遊んでいる時の子どもの発達を理解する必要があるということです。

どうしてわからないのかをわかってくれるって、すごく素敵ですね!子どもの発達を理解するということには、そういう意義があるんですね。

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そうです。私の研究の一つに、遊び場と仲間関係や遊びの内容との関連について調べたものがあります。昔は、子ども達の身近に野原や空き地、公園などの様々な遊び場が存在しました。しかし、現在はそれらの遊び場が大幅に減少しています。また、公園などの遊び場が整備されている地域においても、安全上の問題から、現在は子ども同士で様々な場所で自由に遊ぶことは難しくなっています。つまり、以前は地域の様々な遊び場で、自然と接し、子ども同士で関わり合いながら多様な遊びを行う機会がありましたが、現在はそのような遊びの機会が奪われています。

確かに、友達同士だけで遊びに行ってはいけなかったり、公園に行ってもやってはいけない遊びがあったりしますね。

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そうですね。このような社会状況の中で、幼稚園や保育所などがどのような遊び場を子どもに提供するのか、そして遊び場が子どもの仲間や遊びにどのような影響を与えるのかということについて、改めて問い直す必要があります。幼稚園などで、幼児の遊び場は屋内と屋外に大きく分類することができます。屋内と屋外の遊び場は共に、幼児の発達的・教育的視点から重要性が指摘されています。

なるほど。屋内と屋外の遊び場が重要なことはわかったんですが、どうやって影響を調べるんでしょうか?

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私は、約1年間、ビデオカメラを用いて3歳児と5歳児の子どもの遊びを観察しました。そして、屋内と屋外の遊び場面を連続的な視点で捉えた場合、前の場面の子どもの行動が、後の場面の行動と関連しているのかについて検討しました。その結果を図1と2に示します。

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この図から、どんなことがわかるんですか?

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各図のプロットはそれぞれの子どもを示しています。横軸は興味の主体(どんな遊びをしているのか)を表し、値が大きくなるほどブロックや積み木などの構成遊びが多く、値が小さくなるほど体を動かす遊びが多いことを示しています。縦軸は社会的関与(誰と遊んでいるのか)を表し、値が大きくなるほど1人で遊び、値が小さくなるほど友達と遊ぶことを示しています。3歳児は屋内と屋外で遊びの内容を変化させる幼児が多く(図1)、5歳児は社会的関与を変化させる幼児が多いこと(図2)がわかりました。

ふむふむ、年齢によって屋内と屋外で違う遊びをしたり、ひとりで遊んだ後には友達一緒に遊んだりしているんですね。

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そうなんです。つまり、幼児は遊び場の違いに関わらず一定の遊びを行うわけではなく、全ての幼児が屋内と屋外において特定の遊び行動を行うわけではなく、それぞれの幼児の遊びは、1日の生活の中で調節されていることがわかりました。そして、その変化は発達によって違うこともわかりました。幼稚園や保育所などにおいて、様々な特徴を持った遊び場面やその変化に伴って、子どもは多様な活動や経験をし、それによって認知・社会的発達を促すと言えますね。

すごい、子どもって、自分で色んなやりかたの遊びをやってみて、成長しているんですね!遊びを観察することで、こうして子どもの発達を理解していくことが出来るとは、驚きです。

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今日、お話ししたように、私たちは、かつて子どもであったにもかかわらず、子どもの心や行動をすべて理解できません。しかし、子どもの主要な活動である遊びを調べることによって、子どもの世界を紐解く手がかりを得ることができます。発達のまっただ中にいる子どもは、日々変動する自分自身の発達を試し、発見し、楽しむために遊ぶのです。是非、そのような子どもの遊びの楽しさと奥深さを一緒に学ぶことができればと思います。

子どもの世界を紐解く手がかりを得ることができるって、わくわくしますね。ひとつひとつの行動がとても面白く見えてきそうです。今日はありがとうございました!

学校教育講座 教授 廣瀬聡弥

※この記事は、2021年9月の情報を元に作成されています。

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カテゴリ   :   研究コラム
最終更新 : 2022-02-28 16:58