現代音楽作曲家として これまでとこれから(音楽教育講座 北條美香代)

奈良教育大学
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現代音楽作曲家として これまでとこれから(音楽教育講座 北條美香代)

 皆さんは「現代音楽」と聞いてどんな音楽を想像しますか?文字通り「現代創られている音楽」と想像されるかもしれませんが、実は現代創作されている音楽全般全てを指すものではなく、「現代音楽」とは、「モダニズム」を意識した音楽であり、言葉を発した人が自分と同じ時代の音楽であると意識している音楽、「コンテンポラリーミュージック(同時代の音楽)」です。私は、この現代音楽の作曲家として研究活動を続けながら、奈良教育大学で様々な教育活動を行なっています。今日は、現代音楽作曲家としてのこれまでの歩みと、これからの展望についてお話ししたいと思います。

 幼少から、音楽教室でピアノやアンサンブルを習っていましたが、高校で進路を考えた際、確固たる将来の展望があったわけではありませんでした。ただ、音楽を続けたいという思いだけは強く、最初は愛媛大学の教育学部の特音課程に進みました。ここでは、中高の教員になるための音楽の勉強を、作曲を軸に行っていたのですが、次第に、もっと最先端の情報に触れたい、専門的に作曲の勉強を深めたいという思いが強くなり、1年間東京にレッスンに通った末、愛媛大学卒業後に東京藝術大学音楽学部に進みました。ここで、初めて同学年たちが創作する現代音楽、というものに直に触れました。最初はその音使いにはカルチャーショックを覚えましたが、次第にその魅力に取り憑かれるようになりました。作曲科第3講座、浦田健次郎先生や川井學先生のもとで精進し、最終的には博士課程まで進み、テクストと音楽との協働関係に関する研究を行いました。

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作品の楽譜

 現代音楽の作曲家は、西洋音楽の流れの延長線上に、新しさを求めて、自分だけのアイデンティティを持った音楽を創作しようと試みています。私も、そんな「自分だけの音楽」というものを作るということを追い求めて、いつも頭の中で音符を紡いでいます。時に一般には理解されづらい音楽になることも多いですが、想像した音が実際の空間で響くことの醍醐味はこの上ないものです。

 具体的な作曲家の活動としては、芸大時代からの仲間とComposer Group Cueという作曲家グループを結成し、これまで自主企画演奏会を11回、2枚のCDをリリースすることもできました。また、岩城宏之さん指揮のオーケストラ・アンサンブル金沢で作品初演された際、若杉弘さん指揮芸大フィルハーモニアで作品初演された際は、演奏家の音の圧力に圧倒され、この上なく格別な時間を過ごしました。東日本大震災で日本中が苦しい時期に、自分に何ができるかを葛藤しながら「祈り」の音楽として書いた、チェロとアコーディオンのための「かぎろひ」は何度も再演され、アコーディオン奏者大田智美さんのアルバムにも収録されている作品ですが、何度聴いても演奏家のアプローチに驚かされ、幸せな時間を過ごすことができています。作曲家とは幸せな仕事だと思います。

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Composer Group Cue第1回目作品展練習の様子(東京芸大にて)

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リリースしたCD

 

 奈良教育大学での教育活動では、教育大学の特色を生かして、奈良のわらべ歌を後世に残していくための新たな教材開発や、音楽科としてSTEAM教育を実現していくための活動、国際交流演奏会の開催など、素晴らしい仲間に恵まれ、様々なことに挑戦しています。研究室の学生の作品発表、合奏授業の発表機会を設けるための演奏会も定期的に行っています。教育活動が糧となり、作品創作に繋がっていることを実感することも多いです。これからも人生の終わりまで、「自分だけの音楽」を模索しながら、特に「言葉と音楽」との関係を大切にした日本歌曲作品の創作に軸を置いて、様々な編成の新しい作品創作に挑戦していきたいと思っています。

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奈良教育大学研究室演奏会、合奏発表(ミュージックベル)の様子

 

 

音楽教育講座 北條美香代 教授

 ※この記事は、2022年8月の情報を元に作成されています。

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カテゴリ   :   リレーコラム
最終更新 : 2022-08-22 10:17